海と命に寄り添う看護 〜与論島で学んだ離島医療〜 (兵庫県出身 看護師11年目)

「結の島ナース」として、鹿児島県最南端の与論島にある与論徳洲会病院で9ヵ月間、看護実践と島での移住生活を経験しました。
離島特有の医療現場、島の人々の温かさや患者との関わり、そして美しい自然と文化に囲まれた暮らしを通して、多くの学びと感動を得ることができた日々の感想をレポートします。
1. 与論島と病院の概要
与論徳洲会病院は人口約5,000人の与論町で唯一の総合病院として、24時間体制の救急医療や、長寿の島として知られるこの地域における在宅看取り医療を担っています。病院はさとうきび畑に囲まれた高台に位置し、窓からは透明度抜群のエメラルドグリーンの海を望むことができます。この自然に囲まれた静かな環境が、医療従事者にとっても心の癒しとなっていました。
2. 自宅で看取る文化と家族の想い
与論島の人々は、「亡くなった場所に魂が宿る」という価値観を大切にしています。
そのため、自宅で家族に見守られながら最期を迎えることが尊重されています。
医療者としてその思いに応えるため、患者とご家族の希望を丁寧に聴き多職種が連携して穏やかな看取りを支援しています。
事務職員を含む全スタッフが連携し、最期の瞬間を支える姿勢はとても印象的でした。
3. 離島医療の限界と搬送対応の現実
離島医療の特徴の一つが、重症患者の本土への搬送です。
心筋梗塞や脳血管障害、多発外傷など与論島では対応が難しい症例もあります。
夜間帯には自衛隊の協力を得ての搬送となることもあり限られた人員での迅速な対応が求められます。
その中でも既存の入院患者への対応も同時に行わなければならずスタッフ全員のチームワークがとても重要でした。緊迫した状況の中での協力体制の大切さや情報共有の有益性を身をもって実感することができました。
4. 島の恵みと仲間との時間
与論島での生活では、地元の新鮮な魚介類や島野菜を使った自炊も楽しみの一つでした。
シビ(マグロの幼魚)やソデイカなどを地元スーパーで購入し、気の合う仲間たちと料理を楽しむ時間は、看護の合間の癒しとなりました。借り上げアパートには調理器具や食器も揃っており快適に生活できました。
島の食材の魅力を存分に味わうことで地域の文化にもより深く触れることができました。
5. まとめ・感謝
与論徳洲会病院での9ヵ月間は、自然に囲まれた穏やかな環境と島の人々の温かい心に触れたかけがえのない時間でした。
医療の限界があるからこそ今できる最善を尽くす姿勢の大切さを学びました。与論の文化と人々の誠実な思いに触れることで、自分自身の看護観にも大きな影響を受けました。
このような貴重な経験を与えてくださったすべての皆さまに、心より感謝申し上げます。
尊々加那志(とうとぅがなし)―― 本当にありがとうございました。
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